空飛ぶバディネリ 『しずかちゃんの遺言』21

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『しずかちゃんの遺言』21

 『しずかちゃんの遺言』 (第21回/全__回)

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21.


 最初、私は手紙のことをすみからすみまで詳しく話さなくてはならないと思っていました。七月二十一日から始まったコロ助との文通を事細かに話さねばと思っていました。
 そのときの私には、たぶん、
「そうだよね、こんな理不尽なことってないよね、たいへんだったね、かわいそうだね」
と言ってもらいたいという欲求があったのだと思います。
 遺言の話をしようとしながらも、本当はこっちの方こそが頭にあったような気もします。
 でも、なんだかそれは、よくないことに思えてきました。
 そもそもひとにはどうでもいい話、という言い方が一番簡単かもしれません。
 ですので、度々勝手なことを言って申し訳ありませんが、手紙の件はほんのちょっぴりだけにさせて下さい。

 コロ助の手紙には、あれだけ請い願われたはずの依頼が計画段階の打診に過ぎなかったとか、契約社員と聞いていたはずが請負いだとか書かれていました。スネ夫の話とはまるで違っていました。
 スネ夫が私にあやまりを入れ、損失の補填を画策していたことも、無かったことになっていました。
 なので、どうしたらコロ助に本当のことがちゃんと伝わるのだろうかと、そればかりが私の頭にありました。
 ちゃんと話せばわかってもらえると思い、何度も何度も手紙を書きました。が、コロ助からの返事はわかるとかわからないというところから超越したまま、こちらの質問に答えてくれることもなく、
「賠償義務はないナリよ」
というものでした。
 ドラ焼き作りが手につかないまま、たくさんの時間とたくさんの文字とたくさんの紙を費やして、私はやっとわかりました。
 私はスネ夫ママに、スネ夫が何をどう誤魔化そうとしていたのかをちゃんとわかってもらえれば、「そういうことならこのへんでケリをつけるしかしょうがないねえ」と、私もスネ夫ママもまあまあのところで納得できる解決案が出てくるものと思っていました。そのためにコロ助が冷静な代理として活躍しているのだと思っていました。
 が、コロ助の仕事は、いかにわからないでいるかということなのでした。
 つまり、わかってしまったら負けであり、代理人として、決してわかったりなんかしてはいけないのでした。コロ助も書いていたように、これは話し会いなどでなく「紛争」なのであり、私はスネ夫ママから金をせびろうとするけしからん輩なのでした。スネ夫がスネ夫ママとコロ助にさせた自分の尻ぬぐいとは、こういうことなのでした。
 私は、コロ助をすごいと思いました。私には決して出来そうもないことを平然とやってのけているのでした。さすがでした。
 スネ夫もすごいと思いました。どうすごいのか考えたくもないくらいすごいと思いました。
 私は、自分の中に黒いいやな味のするものが生まれ、どんどんふくれあがる気がしました。いやでたまらない気分でした。ちっともすごい気がしませんでした。

 私は、手紙の話が嫌いだと言いましたが、それは、手紙のことを思い出すたび、苦しい思いが蘇ってしまうからです。
 自分の中から巻き上がる、腐れきった膿のようなものにおぼれてしまいそうな気がするのです。
 恨みの感情というのかもしれません。
 諦め切れない、諦めの感情なのかもしれません。
 私はタケコプターですから空を飛ぶのは得意なはずですが、泳ぐのは苦手です。膿の中を泳ぐなんて考えたくもありません。
 ここはひとつ、話をちょっと前に戻して、最後のしずかちゃん調査の話をさせて下さい。


                             つづく...

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