空飛ぶバディネリ 『青い巣』(第4回/全16回) by AntennaMan

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『青い巣』(第4回/全16回) by AntennaMan

『青い巣』(第4回/全16回) by AntennaMan

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 サアと暮らしはじめてつくづく思うのだけれども、これまでの僕の住んでいた世界はとても狭い世界だった。いや、以前の僕ばかりでなく、現在の全ての人の住んでいる世界が皆そうだろう。狭いというのに語弊があるなら、平面的とでもいおうか。
 だいたいこの世は三次元の立体で構成されているといえるのだろうけれども、特殊な状況を除き、人の生活の場はまるきりの平面でしかない。地に足をつけずに生活をしている人などいないのだ。ビルや飛行機の中だって平面の上という点では本質的に変わらないし、フリーフォールやらなにやらにしたって、ただの平面から平面への移行でしかない。特殊な状況というのは、宇宙空間にいる場合やダイビング中くらいだろう。ひょっとしたら、スクワットに熱中している人の場合も入れていいかもしれない。
 そんな平面の世界しか知らない僕だったが、今はこんな小さな部屋の中でさえ、まるきり違う世界に思えている。太陽を背に浮かびあがって自分の影を見下ろしてみたり、部屋の底から天井に向かって仰向けに宙返りをしてみたとき、特にそう思う。
 斎藤は三次元の世界を泳ぎ回って話をする僕に、おまえ近ごろ感情表現が動物化してるぞ、などというが、この感覚ばかりは水に入ろうとしない彼にはわからないだろう。僕は縦という新たな方向を手にいれたのだ。動物化云々はともかく、今までと同じであるわけがない。
 鳥のように、といってもいい。僕とサアは、僕らの城の中を自由自在に飛び回って生活していた。

 天井をぶち抜いて幾日かしたころ、僕達は困ったことがおき初めていることに気がついた。
 部屋の中が明るくなったためか、藻、つまり植物プランクトンや付着藻類の繁殖が目立ち始めたのだ。
「いったい、どこからやってきたんだろう」
 そう首をかしげる僕に、サアは、こんなのどこからだって沸いて来るわよ、といった。そして、
「でも、あんまり濁ってきちゃうのもいやね」
と、僕に対処策を提案した。
 サアの指導の下、僕達は手伝いあって八畳間の畳に海藻を植えることにした。
 窓辺にはブラインドがわりにアマモをずらりと並べ、テレビのところからソファーにかけて、アオサ、アサクサノリ、ワカメ、テングサ、ホンダワラ等をそれなりにレイアウトすれば、ちょっとしたミニチュアの森ができたようだった。
「バッチリグッドじゃない」
両手を腰にあてて下を見下ろすサアが満足そうにいった。
 もうひとつ、夕立で降った雨が塩分濃度の関係で水面に層をなしてしまったという問題があった。
 目がちらちらするやら味がかわるやらであまり気持ちのよいものではなかったため、次からは天気予報に注意して降りそうなときは日よけ用のシートを張ることにした。溜まってしまった分はホースで流してもよかったのだが、水ももったいないのでふたりして並び、足や尾鰭をばたばたさせてかき混ぜた。効率は悪かったが、そんな労働はなかなかに楽しかった。

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