空飛ぶバディネリ 『しずかちゃんの遺言』2

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『しずかちゃんの遺言』2

 『しずかちゃんの遺言』 (第2回/全__回)

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2.



 手紙のことを話すつもりだったのですが、もう少し続けさせてください。
 冬のある日、スネ夫から連絡が入りました。
 アルバイトの依頼でした。
 今度のアルバイトはいつもとちょっと違っていました。
 いつもは私の手が必要となる数日前に電話をかけてよこし、「今度の金曜日、もし都合がついたらアルバイトをお願いできないかなあ」などというものでしたが、今回はメールで仕事の計画表を送りつけ、「この表の日程で手伝ってくれないかい」と言ってきたのです。
 その計画表は、印刷してみたら横幅が二メートルにもなりました。左から五センチくらいのところが一月一日で、右から五センチくらいのところが八月三十一日になっていて、ところどころに私の名前が書かれていました。
 心当たりはありました。
 ハロウィンとクリスマスの丁度中間くらいのときでしたが、スネ夫が、大きな仕事が入ったぞ、と大喜びしていました。
「すごい仕事の受注が決まったんだよ、すごいよすごいよ」
 そのときのスネ夫は本当に嬉しかったようでした。
 何がすごいのかといえば、その仕事の金額がすごいとのことでした。
 毎日毎日遅くまで仕事をしているのに、後輩のカオリちゃんより自分の受注額が少ないということをスネ夫はいつも気にしていました。
「おかしいでしょう? ねえ、これっておかしいよね」
 私は、スネ夫よりカオリちゃんの方がずっとずっとコンピューターのマウスさばきが上手なことを知っていました。けれど、マウスさばきと受注額が関係するとは思えませんでしたので、おかしいのかおかしくないのかわかりませんでした。
 仕事の手際や電話の応対については、どう見てもカオリちゃんの方がはるかに上を行っていましたので、これもおかしい理由にはなりません。ですが、スネ夫にとってのおかしいことと、傍目に見たおかしいことにズレがあるのは、スネ夫がスネ夫らしくみえる理由のひとつでしたので、特に気にするようなことではないはずです。
 スネ夫は、ぴょんぴょんとびはねて喜んでいました。
 私は、「おめでとう」と言いました。
 人が喜ぶ様子を見るのは、いつだって嬉しいものです。

 話を戻しますが、今回のアルバイトの話は、やはりこのぴょんぴょんとびはねていた仕事についてのものでした。
 そして、その内容は、「しずかちゃんの調査」というものでした。
 私は「しずかちゃんの調査」などやったこともないし、それがいったいどういうものかさえ想像もできなかったので、スネ夫に電話をかけて言いました。
「だめだよ、僕は衛星放送のアンテナなら押入れに隠してあったのだって探し当てたことがあるけど、しずかちゃんのことなんて全然わからないんだよ」
 けれどもスネ夫は、
「それでもいいから。ねえ、お願い。頼むよ。この調査で経験をつめば、三年後にはしずかちゃんのプロになって、ばりばりかせげるんだよ」
と言いました。
 どうやら電話口の向こうでもぴょんぴょん飛び跳ねているようで、息がはずんでいました。
 私の仕事はドラ焼き作りでしたから、しずかちゃんのプロと言われてもピンときませんでしたし、どうすれば今から夏までの経験だけで、三年後にプロになれるのかわかりませんでした。それに、たとえバリバリかせげてもドラ焼きを作る時間がなくなっては困ります。
 なので、プロがどうこうには全く興味はわきませんでしたが、いつもひとりぼっちで仕事をしているスネ夫がのどから手が出るほど人手を欲しているということについてはよくわかっていました。他に頼める人がいなかったのかどうか知りませんが、今、スネ夫が私を頼ってきたということだけは確かでした。
 私が予備知識も何も全くないことから、アルバイト料は今までより下げさせてねと言われましたが、しずかちゃんの調査自体は月に三日程度であり、それプラス、株式会社スネ夫ママの建物の中でのちょっとした内勤の仕事が一日か二日程度ということでした。なので、たいした負担にはならないだろうなと考えた私は、結局、スネ夫の頼みをひきうけることにしたのでした。
 文句を言うことが生き甲斐のようなスネ夫が、こんなにも喜び張り切っているのです。私が出来ることには限りがあるでしょうが、それでもスネ夫は私を頼ってきたのです。力の限り協力したいと思いました。
 また、私自身の事情として、真冬はドラ焼きの材料が凍って仕事にならない日が少なくないため、気分的にも割合に余裕があったということと、単純に、知らないことへの好奇心というものがわいていました。

                             つづく...

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