空飛ぶバディネリ 『閻魔様の殉職』(第1回/全4回) by AntennaMan

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『閻魔様の殉職』(第1回/全4回) by AntennaMan

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 じゃ、早速注文といきましょう。
 おねえさん、ここいい? はい、じゃ、タンのコースを十人前、そう、その一番品数の多いやつ、うん。あとは単品でタンサシを十人前。飲み物はとりあえずビールでも持ってきて貰おうかな。そう、大ジョッキで十こ。なに、大丈夫。多すぎやしないよ。じゃ、よろしく。
 しかし、なんですなあ。こんなタンばかり食わせる所があるとは、驚きですなあ。あたしゃ大王様の所につとめてもうずいぶんと長いことになりますが、つい最近まであれを食うなんて思ってもみたことがありません。ところが女房の読んでる雑誌をなにげなくめくってみたら、でかでかとタン料理の店なんてのってるじゃないですか。こいつは是非一度大王様をご案内しなくてはと思いましてね。
 タンが食べられるものだってのはご存じでしかたか。ほう、そうですか。さすがですな。しかし、公私混同っていうかぴんはねっていうか、そういうのはいけませんわな。知っていながら食べないでいたなんて、やはりさすが閻魔大王様です。あたしゃ、役得役得などといっているやつらをみると本当に腹が立つのですよ。極楽いくとよくいるでしょう。ま、大王様のおそばに控える仕事のおかげで立派な衣装を着ていられるのは役得っていやあそうですがね。ときにゃ、いっつもふんどししか支給されない赤鬼や青鬼が哀れになることもありますよ。
 あわれっていやあ、神さんや仏さんらもまあ哀れですね。いっつもあんな粗末な布切ればかりで。
 この前の雨の日ね、みちゃったんですよ、みちゃったっていったって大したもんじゃないですが、あのいつも池の左っかわにたってる神さんがいるでしょ。あのひと結構毛深いんですよ。だから雨に濡れた服にすね毛やらなにやらが透けてみえててね。神様の役につく人は毛深くちゃいけないなんていったら差別につながるでしょうからそうもいえませんが、なんか、どうもイメージがねえ。せめて、もう少し立派な、濡れても毛が透けないような服を支給してもらえればいいのになんて思いましてね。
 最近いい布地もあるんでしょ。白い水着用のやつとか。そういうの導入すればいいのに、どうも体質が古いっていうかなんていうか。ねえ。毛はいけませんよ毛は。やっぱその職業イメージってのはいっくら職種に貴賎がないっていってもなんだかんだとつきまといますからねえ。

 おや、なんですかこれは。ほう、つきだしはタンのマリネですか。じゃ、ビールも来ましたんで早速乾杯といきましょう。
 さすが、いい飲みっぷり。あたしゃ最近はとんとだめですわ。飲みすぎると翌日はほんとに仕事になんなくて、晩酌もひかえているんですよ。いや、今日は大丈夫です。こんな機会に飲まないっててはありません。とことんやらせていただきます。ビール追加しときますか。そうですか。そうですね。あったまっちゃいますもんね。
 ときに、今回の人事移動、あれはいったいなんなんでしょうな。いくらなんでも針山要因減らしすぎだと思いませんか。あんなんで事故でもあったらどうするってんでしょうね。ただでさえ危険な部署だってのに。ま、前回の機構改革で、舌抜きを技能職にして貰えたおかげであたしゃ仕事にありつけたわけだから、上のやることに文句いえる立場じゃないですがね。
 でも、いろいろよくわかんないことありますよ。昔は閻魔職についた人が舌抜いてたんでしょ。え、鬼だったりもしたんですか。なんだかわかんないな。閻魔職が天上界にあったときもあるって話きくと、もう思考停止っていうかそんな感じで。ま、昔のことは別にどうでもいいんですけどね。
 でもだいたい、大王様に人事権がないってのはおかしいですよ。なら地獄の大王なんていいかた辞めるべき、あ、いやお気をわるくしたら申し訳ない。そういうことじゃなくて、昔はともかく、今のあたしらの部署はただの地獄の入口ってことになったわけでしょ。それなのに建物の作りはまるで地獄だし、大王様も地獄の大王のままだ。せっかくわかりやすい組織に機構改革されたってのに一貫性がないわけですよ。出向ならちゃんと出向ってあつかいにすればいいのにそういうわけでもない。ま、子供らにはただ地獄とか極楽っていうより閻魔様のところっていったほうがうけがいいから、おやこれも職業イメージってやつですか。

 きましたきました。これがタンのサシミですか。おねえさん、たれはこれ? ほう、このネギを挟んで。さ、大王様どうぞ。どうですか。そうですか。よかったよかった。じゃ、あたしはこのマリネから。
 おや、これはいけます、いけます。あたしゃ、このマリネにはいっているタマネギが好きでしてね、ほらこの薄皮だったところが糸のようになるでしょう。こいつがほんとに好きでして。


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